私はMI治療という、歯に与える侵襲を最小限にするという考え方をベースに治療を行っているので、極力患者さんの大切な歯を削りたくないと考えています。また、歯の神経も取らずに済むものであれば極力保存する方針です。
しかし虫歯が深く、神経が炎症を起こしてズキズキとうずく様に痛む場合や、過去に受けた雑な根の治療の不具合から生じる、根の先に膿がたまってしまう根尖病巣がある歯などは、根の治療が避けられない場合があります。
2011年1月に当院で根管治療をスタートしました。
根の周りに大きな病巣が出来ていました。このレントゲン画像は、根管治療に使用する器具を試適して根の長さや方向を確認しているものです。
根の先を丸く囲むように黒く濃く見える病巣が確認出来ます。骨が溶けて膿がたまっている部分です。
2016年の4月に定期検診で来院された際に、経過確認で撮影させていただいたレントゲンです。
根の先を黒く濃く丸く囲むように存在した病巣がかなり縮小して、周りの骨と同じ灰色になっていることが確認できます。つまり溶けてしまった骨が再生したということです。
もちろん症状もなく経過良好です。その様な場合に行う根管治療に対する私の治療方針をお話します。
根管治療を経過良好に導くために私は以下の根管治療のピラミッドを大切に考えています。
【臨床診断】
根管治療のピラミッドで一番大きなスペースを取っている様に最も大切な部分とも言えます。患者さんの感じている症状を問診で良くお聞きします。そして肉眼とマイクロスコープによる視診、口腔内写真やレントゲンによる画像診断、歯の動揺具合や触れた時の痛みを調べる触診、軽く歯を叩く打診、温熱刺激での発痛があるかを調べる温度診、これらの情報を参考にした上で、根管治療を行うべきかどうかを診査診断します。
歯科治療の世界も日進月歩です。私が歯科大の学生だった25年以上前の常識がそのまま通用する時代ではありません。当時は神経を取って大きく削って、スッポリ金属のかぶせもので修復することが主流でした。現在の私の考え方は無駄に健康な部分を多く削ることは極力避けて、削らなければいけない最小限の範囲内でコンポジットレジンを精密につめて治療を終えるというものです(MI治療)。治療前から元々金属のクラウンがかぶさっていたなど、歯の状態によりレジンでは修復が難しいケースもあります。
もし神経が一部露出してしまった場合でも、周りに虫歯の部分が残っていなくて出血をきれいに止めることができれば生体親和性の高いバイオセラミックスを使用して良好な結果をこれまで何例も得てきました。露出した神経を保護する様にバイオセラミックスを直接神経の上に詰める処置を直接覆髄(ちょくせつふくずい)といます。
直接歯髄覆罩(ちょくせつしずいふくとう) | |
麻酔抜髄 | 感染根管治療 |
残念ながらその後の経過により神経を取る処置に移行するケースもありましたが、条件が整っていればバイオセラミックスを使用した直接覆髄は試してみる価値が十分ある治療方法だと思います。直接覆髄をした歯は最低1カ月以上は経過を観察して症状の無いことを確認してからレジン充填などの処置になります。
【基本コンセプトの遵守】
根管治療を経過良好に導くために、次に大切なことは根管治療に対する基本的なコンセプトを遵守するということです。
歯を抜かずに保存するための根管治療の基本的な概念となるのは、
この2つを遵守するのは根管治療に臨む歯科医師として、当然の話です。
これらのことを実践していく上で当院は以下のことにこだわっています。
唾液や細菌が根管内に侵入しないよう、また、使用する薬剤や薬液がお口の中に漏れてしまう事故を防ぐ為にラバーダム防湿を行っています。これは根管治療を行う歯科医師としての最低限のマナーだと考えています。
治療器具の専用洗浄機【ウオッシャーディスインフェクター】で、MAX95℃の温水で高水準な洗浄消毒を行います。更にヨーロッパの厳しい滅菌基準をクリアした【クラスBのオートクレーブ】で、適切に滅菌されたものを使用します。根管内を洗浄する際に薬液を入れて使用するシリンジと先端のチップは、毎回使い捨てにしています。
マイクロスコープを使用して根管内の汚染や感染源の取り残しを、正確に把握して除去します。
また肉眼やルーペでは見つけにくい小さな根管の入り口もマイクロスコープの拡大視野と適切な器具と手技で見逃しません。
根管治療は、細菌との戦いという部分がとても大切です。ここで手を抜けば、根の中に薬を詰める根管充填が一見綺麗にされている様に見えても、その治療は成功したとは言えないと思いますし、細菌が侵入するリスク、感染するリスクが高まるのを承知でラバーダム防湿をしないで治療することが患者さんの幸せにつながるとは、とうてい思えません。日本の根管治療、特に保険診療ではラバーダムの点数が無かったりすることもあり、ラバーダムの使用率は非常に低いです。また、ラバーダムをかけて治療することを患者さんが嫌がるケースもたまにあります。しかし、良好な治療経過を得るためにはラバーダムは必須とご理解ください。
【歯内療法のテクニック】
現代の歯内療法のスタンダードなテクニックは、しなりがよくて切削効率の高いニッケルチタンファイルを使用して、根の本来の形態を大きく変えずに拡大清掃して、化学的に薬液による洗浄で根管内を綺麗にして、緊密に根管充填をする。というものです。もちろん当院もそのスタンダードな方法に加えて、マイクロスコープを使用して補助的な器具も多数使用して更に安全確実な歯内療法を目指しています。
当院で使用しているニッケルチタンファイルは安全確実に滅菌したものを当院での規定回数以内に廃棄するか、1回使用しただけで廃棄する種類のものもあります。かなりコストはかかりますが、安全確実な歯内療法を目指す以上、当然のことと考えています。現代の歯内療法は手順通りに正確に慎重に行えば、歯科医師による差は出にくい部分のはずですが、現実には各歯科医院によって使用している器具も根管治療への考え方や知識や情熱も違うので、差が出ます。
根管充填には側方加圧充填と垂直加圧充填があります。上の写真は垂直加圧充填に使用します。垂直加圧充填は温めて柔らかくしたガッタパーチャポイントというゴムの様な樹脂を根管内に充填して上から垂直的に押し込み加圧して、緊密に充填する方法です。曲がった根管などの複雑な形態には垂直加圧充填の方が適していると言われます。私は根管の曲がり具合や長さなどにより、判断して側方加圧充填と垂直加圧充填を使い分けています。どちらで行うにしても緊密に充填することが大切です。
根管治療を受けることになった際の医院選びは慎重に行ってください。
【外科的な歯内療法】
これらのステップを正確に行っても尚、改善の見られない根尖病巣に対する処置としては、歯肉を切開して骨を削り、汚染された根の先を切断する歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)という外科的な歯内療法があります。私は外科的な歯内療法の専門家ではありませんし、極力通常の歯内療法で結果を出したいと考えているので外科的な歯内療法は当院では積極的に行っていません。しかし外科的な歯内療法がどうしても必要な場合は技術的に信頼できる大学病院等をご紹介することは責任をもって行います。
私は外科的な歯内療法や、その先にある抜歯という治療を極力回避できるようにこれまで培った知識と技術と情熱を持って根管治療に臨んでいます。現在、根の治療がなかなか治らなくてお困りだったり、経過が思わしくなかったりなど不安のある方はぜひ当院にご相談ください。
王子本町歯科クリニック | |
東京都北区王子本町1-9-14 アクセスマップ・地図 |
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