当院の院長、君和田 威が、2022年4月「日本顕微鏡歯科学会」の初日に行われた学会認定医試験を受験し、合格通知と認定証を頂きました!2022年5月23日時点での学会認定医は、全国で156名です。その中に名を連ねられたことを大変光栄に思います。今回の合格で更に気を引き締めて、少しでも良質な治療をご提供できるように励みます。そして、これから顕微鏡歯科に取り組まれる先生方のお役に立てるよう頑張ります!
『日本顕微鏡歯科学会 認定医一覧』
歯科医院では、指の爪程度の小ささしかない歯を、暗い口腔内で治療します。虫歯や痛みが再発しない治療が出来るかどうかは、「どれだけ治療部位がよく見えるか」にかかっていると言っても過言ではありません。
治療の際に治療部位を見る手段は、肉眼、拡大ルーペ、マイクロスコープがあります。より精密で安全な治療を提供するために、多くの歯科医師がルーペなどによる拡大下での治療をおこなうようになってきました。
当院でも、最大3倍の拡大率のルーペを使用して治療をおこなっています。通常の治療であれば、この拡大率で十分な対応が可能です。
しかしながら根の治療でルーペを使用しても見つけにくい根管があるときや、根の中に折れこんだファイルなどの異物が存在するときや、なかなか治らない根の治療の感染源を発見するときなどに、もっと拡大率の高い器械=マイクロスコープで治療を行うと、予後が非常に良くなることが経験上わかっています。
当院では最大20倍の拡大倍率のマイクロスコープを使用しています。マイクロスコープは脳外科手術や心臓外科の手術などでも使われています。歯科治療においては「よく見えるかどうか」が治療の質に大きく関わってきます。
では、なぜそんなに大きく拡大して見る必要があるのでしょうか?なぜ「見える」ということが重要なのでしょうか?昔の歯医者さんはマイクロスコープが開発されていなかったので、マイクロスコープなしで治療をするのが当たり前でした。
昔の歯医者さんだって、よく見たかったはずです。ミラーテクニックを駆使したり照明の工夫をしたり、無理な姿勢でのぞきこんだり・・・
昔は『予防拡大(よぼうかくだい)』という虫歯のところを健全な歯質も含めて大きく削る考え方が一般的でした。ただでさえ暗い口の中の奥の方の歯の、更に後ろ側にできた虫歯となると、それはそれは大変な治療です。直視はできない、ミラーはすぐにくもる、ライトの光も届かない、唾液や頬の粘膜にじゃまをされる・・・
そんな悪条件の中では、虫歯になっていない部分も含めて大きく削る『予防拡大』という考え方が一番合理的だったのでしょう。歯科医師の勘と経験を頼りに見えない奥歯を削り、虫歯を取り残してしまうよりは、大きく『予防拡大』して削り、銀歯で修復するという考え方が主流であり、それが当たり前の時代だったのでしょう。
しかし今は、なるべく歯を削らない、健全な歯質をすこしでも多く残す方が歯のために良いという『MI(エムアイ)治療』の時代になっています。診療機器の進歩発展と歯科医師の努力次第で見えない場所を見える化して治療することが可能になってきました。
もちろん弯曲している根管の先の方はマイクロスコープを使ってどんなに倍率上げても見えません。それでもマイクロスコープの無い時代から比べたら「見える」治療が可能になったと思います。
私がマイクロスコープを導入したのも、肉眼とルーペでの治療に限界を感じていたことがきっかけです。当院で力を入れている歯内療法をおこなう際も、「ここでマイクロスコープがあったらなー」と感じることが多くなったのです。
例えば根管口という根管の入口が閉鎖していて見えにくく、なかなか見つけられないとき。根の中を綺麗に洗浄できているのか肉眼では確認が困難なとき。根の治療に使用するファイルという器具の折れ込みを発見したとき。根の再治療の際に、古い薬を除去するとき・・・etc
肉眼+ルーペやレントゲン写真、口腔内写真などの情報を頼りにこれまでそれらの難症例に取り組んできましたが、マイクロスコープがあればこれらの処置の精度は格段に高まります。
今まで見えないところを探り探り処置していたのが、状況をしっかり見ながら、しかも何倍にも拡大され、LEDライトで明るく照らされた状態での処置になるのですから、当然と言えば当然です。
ひとくちにマイクロスコープと言っても色々なメーカーのものがあり、金額もデザインも性能もまちまちです。歯科医師との相性もあるでしょうし本当に迷いましたが最終的に私が選んだのは『ライカM320』という機種でした。
『ライカM320』は、カメラや手術用顕微鏡で信頼度の高い世界的ブランドあるライカが、最新の技術とノウハウを投入した歯科用顕微鏡システムです。レンズの光学性能はライカの高いクオリティをそのままに、操作性や衛生面にいたるまで現代歯科医療の現場に対応する様々な性能が凝縮された素晴らしいマイクロスコープです。
ライカでは最大20倍の倍率での使用が可能で、明るいLEDライトのビーム照射で暗いお口の中や、歯の根の中も明るく、クッキリと観察出来ます。初めて実際にライカのレンズで観察した時に、ルーペとは別次元の見え方に感動しました。
マイクロスコープを使うと、治療の精度や可能性が広がります。例えば根の治療をする際にファイルという細い器具を使用するのですが、どんなに注意深く扱っていても偶発的に根の中で折れ込んでしまう場合があります。
基本的に除去するのが原則ですが、どうしても取れない場合はそのままの状態で治療が進む場合があります。もちろん歯科医師と患者さんの双方が納得の上での話です。
下のレントゲン画像もそのような歯です。前医が根の治療をした際に、残念ながらファイルが折れ込んでしまったものです。この歯は根の先に病巣があるため、再度根の中の治療をする必要性がありました。
かぶせ物と土台を撤去して、マイクロスコープで根の中を確認してみると、すぐにファイルの存在を確認できました。マイクロスコープで見ながら注意深く超音波の振動を与えて、無事に折れ込んでいたファイルを除去することができました。肉眼やルーペだけの状態だったら、こんなに簡単に取り出すことはできなかったと思います。マイクロスコープを導入して良かったと心から感じた症例の一つでもあります。
これは左上の天然歯の小臼歯が食事中に破折してしまい来院されたケースです。歯肉の下の方まで破折の切れ込みはあったのですが、幸い唐竹割りの様に真っ二つに割れるまでは及んでいませんでした。患者さんと相談の結果、保存処置を試みることになりました、まず、割れてブラブラの歯質を除去して、歯科用のレーザーを使用して歯肉を焼き切り、破折部分の端がしっかり見える状態にしました。ラバーダム防湿を行い、接着に備えて歯の表面の汚れを染め出しクリーニングしました。その後接着処理を行い、コンポジットレジンを盛り足して高さを回復して、通法通り根管治療を出来る状態にしました。根管充填終了後はレジンコアで土台をたてて、仮歯を装着して、レーザーで焼いた歯肉が回復するまで待ちました。
その後最終的な型どりを行い、セラミックのクラウンをかぶせて、順調に経過しています。
こんな風に書くと、いかにも簡単そうに誤解されてしまうかもしれませんが、誰もがマイクロスコープを導入したその日から、自由自在に使いこなせるわけではありません。
マイクロスコープを見ながら直接処置が出来る歯は、上下の前歯、犬歯の表側にある虫歯くらいのものでしょう。それ以外のほとんどの場所では、ミラーテクニックと言って、歯科用のミラーに写した歯を見ながらの治療になります。
実は拡大視野でミラーテクニックを使用して治療器具を操作するということは非常に難しく、ある程度使いこなせるようになるまでは、それなりの時間がかかります。本を読む、ハンズオンセミナーを受講する、顕微鏡治療の上手な先生の動画を視聴する、学会に入り情報を得る…私も色々な方法を併用してマイクロスコープに慣れてきました。
マイクロスコープのデメリットはと言えば、使用するとあまりにも細部がよく見えるので、逆に診療時間が長くかかることがあります。大変心苦しいのですが、その点だけご了承ください。たとえば、保険治療では20~30分程度で終わらせてしまうつめ物の治療に、2時間~3時間かかる等。
王子本町歯科クリニックでは今後も高性能のマイクロスコープ、ライカM320を活用して、良質で精度の高い治療をご提供できるように研鑽します。
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